プラネタリーヘルスは、2015年に最も権威ある医学誌『The Lancet』において提唱され、同年、国際的なヘルスケアサミットであるWorld Health Summitでも提案された国際目標です。

人の健康やウェルビーイングを実現したいと願う時、私たちは分断した世界を再び統合し、つながり合うシステムであるコミュニティ、社会、経済、そして生態系を含む地球全体のシステムを地球巨視的視座で捉え、その全体の健康とウェルビーイングを実現することが必要です。
それが、「プラネタリーヘルス(惑星の健康)」です。
国際目標として提唱されてから、SDGsやネイチャーポジティブ経済への移行を踏まえながら、学際的、分野横断的連携による研究推進や社会実装が求められています。
プラネタリーヘルスは、従来のような要素還元的な部分的理解に基づく表層的アプローチでは、実現は不可能です。
今、私たちには、抜本的にあり方を変え、世界との関わりを変え、社会のプレートを変える大転換(グレート・トランジッション)が求められています。
1.プラネタリーヘルスの国際的な定義

プラネタリーヘルスは、
「人類の未来を形成する政治、経済、社会システムと、人類が繁栄できる安全な環境の限界を定義する地球の自然システムに真摯に向き合うことで、世界で達成可能な最高水準の健康、幸福、公平性を達成すること。」
Planetary Health is “the achievement of the highest attainable standard of health, wellbeing, and equity worldwide through judicious attention to the human systems—political, economic, and social—that shape the future of humanity and the Earth’s natural systems that define the safe environmental limits within which humanity can flourish. Put simply, planetary health is the health of human civilization and the state of the natural systems on which it depends”
-The Lancet Commission on Planetary Health
(Planetary health: a new science for exceptional action The Lancet, Vol. 386, No. 10007)
簡単に定義すると、「人類の文明とそれが依存する自然システムの健全性」とされています。
Planetary health is the health of human civilisation and the state of the natural systems on which it depends”.
2.SDGsとの関連性
SDGsの各項目は、個別に実現しようとすることで相互に矛盾が生じることが指摘されていますが、プラネタリーヘルスは、それらのつながりや影響を全体性で捉えていきます。
そのため、SDGsが年限を迎える2030年を超えても、それらの目標をバランスをとりながら実現していくことにつながります。
3.ネイチャーポジティブとの関連性
生物多様性の国際目標が掲げられ、環境省、農水省、国交省、経産省が「ネイチャーポジティブ経済移行戦略」を提案しています。プラネタリーヘルスは、人と人とつくる経済、社会システムと生態系との関係性を捉え、ネイチャーポジティブ経済への移行を踏まえながら、達成していく大目標です。
4.破壊→持続可能性→再生(リジェネレーション)へ
これまでは、人類のあらゆる経済活動が環境に負荷を与え、それによる環境変化が人の心身の健康を害してきました。人類が生きることで人も地球全体も病気になっていたと言えます。SDGsが掲げられ、持続可能性の重要性が唱えられてきましたが、今は、それを更に超えて、より積極的に人が関わることで環境を再生していくリジェネレーションが重視されています。人類のあらゆる経済活動が、環境を再生し、人を再生していく。人類が生きることで人を含む地球全体が健全になっていく未来を描いています。
5.地球巨視的視座と地球道徳
プラネタリーヘルスの考えを理解し、行動するためには、私たちがこれまでの考えのフレームを破り、発想の大転換が必要になります。
プラネタリーヘルスを捉える、新たな哲学をもとに、中心となる精神性を定義します。
プラネタリーヘルスを理解するために必要な、自分とつながり合う社会、生態系、地球全体のシステムを巨視的に捉える視座を「地球巨視的視座」と呼んでいます。
人を含む地球全体に対する地球巨視的視座(=SELF AS WE)を持ち、人の社会、生態系、地球全体の秩序を成立させながら、判断し行動できる規範を「地球道徳」と定義します。
詳しくは、以下の用語解説をご覧ください。