プラネタリーヘルスの考えを理解し、行動するためには、私たちがこれまでの考えのフレームを破り、発想の大転換が必要になります。
プラネタリーヘルスを捉える、新たな哲学をもとに、中心となる精神性を定義します。

私たちは、日本的な自然観、精神性をプラネタリーヘルスの扇の要と捉えています。

地球巨視的視座

近代、人と自然は分断し、私たちは自分のため、人類のために社会を最適化してきました。
実際には、部分は全体に影響を与え、全体は部分に影響を与えていますから、切り分けて考えることはできません。自分をつながり合う大きなネットワークの一部と捉え、その全体を自分ごととして捉えていく新たな自己観、生命観を持つことが必要です。
自分だけが自分であるという孤独から、自分はこの地球の、さらには物理的に作用し合う太陽系〜銀河系という宇宙全体の中にあるという在り方を持ち、全て自分ごととして捉え、動くことができます。

今、ウェルビーイングが重要だと言われていますが、ビーイングとは、在り方。つまり視座のことです。どんな視座を持って、何をするのか(ドゥーイング、ゴーイング)が問われています。

私たちがこれまで通り、「私は、私」というエゴイスティックな視座で、自分だけ、人類だけのウェルビーイングを求めて行動することは持続不可能であることは明らかです。
今、私とつながり合う生態系や山川海などの環境、太陽などの地球環境に影響する宇宙物理系、そしてこれからの時代はロボットも含めた、つながり合うシステムの全てが私であるという視座を持つことを提案したいと思います。
地球という場を共有し、つながり合うシステム全体を私と捉える視座を「地球巨視的視座」と呼んでいます。プラネタリーヘルスを実現する上では、この視座をもとに行動することが欠かせません。

利己、利他から自利利他へ

私たちは、食べることを通して、物質的に生態系がつくりだす生命の網(WEB OF LIFE)とつながっています。また、現代は、情報ネットワークは世界規模につながり、自分の脳はネットワークに外部化され、更にAIの頭脳ともつながっています。
自分と自分とつながるあらゆる生物、非生物全体がつくるネットワークが、物質空間にも情報空間にも広がっています。
日本においては、古来からのアニミズム、それをもとに発展した神道、そしてそれらを踏まえて日本で発展した仏教があり、自分と森羅万象を含む他者を別々のものではなく、「自他一如」と捉えてきました。
古来からの自然観を踏まえ、世界への解像度を高めていくことで、日本式のプラネタリーヘルスを捉えていくことができます。

地球巨視的視座を持つことで、これまでのように、自分のための利己でも、他者のための自己犠牲を払う利他でもなく、自分の利益が全体の利益であり、全体の利益が自分の利益であるという空海が真言密教において掲げた「自利利他」と捉えることができ、自分ごととして考え、行動することができるのではないでしょうか。

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