農・食・歯・医の実践的な連携

Agri-Dent-Medicine 農食歯医連携とは

「食べること」で、腸の“土”と、地球の“土”の両方を癒すこと
そして、土を介して、人と地球をつなぐプラネタリーヘルスの実践である

農・食・歯・医、そして「食べる」を実践する生活者が一体となって、プラネタリーヘルスを支える包括的で実践的なアプローチです。​

人は、食べることで、腸内環境を通して心身の健康を維持しながら、農業を通じてその土地の微生物を含む生態系、周辺や流域の環境、地球環境に影響を与えています。
これまで、バラバラだった農-食-歯-医の分野の連携を促進し、プラネタリーヘルス達成のための重要なネットワークを再構築します。
食は、私たちを生態系とつなぎ、土壌微生物-植物-腸内細菌-人の細胞間のmiRNAなどによる情報伝達を通じて、私たちの心身の健康を支えています。
古来から豊かな生態系を再生し、山里海の連環を維持してきた里山システムは、私たちの暮らしを支え、食糧生産にとどまらず、健康・ウェルビーイング、地域社会、生態系、環境、食料安全保障、文化、観光、防災等への多様な価値があります。
しかし、今、日本において一次産業は衰退し、耕作放棄地や放置林の増加から里山は崩壊し、高齢化や人口減少により地域コミュニティは崩壊しつつあります。
私たちは、世界に誇る先人の知恵から学び、農食歯医連携=Agri-Dent-Med.を通してプラネタリーヘルスの実現を目指していきます。

  • 生産者、農業や土壌分野の専門家、シェフなど食の分野の専門家、医師、歯科医師の連携を構築
  • 消費から生産までの各セクター、医療・ヘルスケア従事者の知識と経験の向上
  • レストラン、学校給食、社員食堂、病院、診療所等の現場の実践
  • 「健康な食の選択肢をつくる」「地域で循環する食と健康の仕組みを育てる」という社会実装モデル
  • 流域における里山の維持・再生
  • 環境再生型農業の推進
  • 日本式プラネタリーヘルスダイエットの提案
  • 理論の基礎となる「微生物循環学」の確立
    土壌微生物-植物-常在微生物-人における相互作用(cross-kingdom-communication)の研究と応用
  • プラネタリーヘルス評価の確立と価値の見える化、価値向上
  • 生命力の評価

微生物循環学

微生物という見えない生命のネットワークを通じて、人と環境の関係性を再構築する。

微生物循環学とは

農学・微生物学・医学・歯学・栄養学などの知見を横断的に統合し、環境・土壌・植物・人間の体(口腔や腸など)に共生する微生物の循環と相互作用を探究する学際的な領域

この新しい学際的領域は、微生物という見えない生命のネットワークを通じて、人と環境の関係性を再構築することを目的としています。私たちの周囲にいる微生物、土壌、植物、口、腸、、、それぞれの環境に暮らす微生物は、相互にコミュニケーションをとり、循環していることが明らかになってきています。

  • 土壌微生物は植物の健康な成長を助ける
  • 野菜に付着した微生物は、発酵をひきおこす(味噌・納豆・ぬか漬けなど)
  • 土壌菌や発酵食品や食物繊維は腸内細菌に影響を与えたり、エサになる
  • 口腔内の微生物(口腔フローラ)は、腸内環境にも影響を与える
  • 腸内細菌は、人の心身とネットワークを形成している
  • そして、私たちの食の選択が、その農業を通じて環境の土に影響を与える

このように、微生物は「土 → 食 → 口 → 腸 → 健康 → 環境 → 土」という、終わりなき生命のループ=微生物循環を形づくっています。

  • 環境や土壌、食品、人体等と共生する微生物の循環、ネットワーク、コミュニケーションを明らかにする
  • それぞれの微生物群がどのように人の健康や環境に影響を与えるかを明らかにする

Agri-Dent-Med.は“実践と連携の現場”であり、微生物循環学はその“根っこにある科学的視点”です。
「見える連携(医・食・農)」「見えないつながり(微生物循環)」の両者を組み合わせることで、プラネタリーヘルスを実現します。

地球のカルテ「プラネタリーバウンダリー」

 “Earth beyond six of nine planetary boundaries”Science Advances 13 Sep 2023 Vol 9, Issue 37

環境学者ヨハン・ロックストロームらの研究者らによって行われている地球の病理状態の診断結果を示すカルテがあります。それが、人類が地球で安全に活動できる範囲の限界点プラネタリーバウンダリーです。2023年9月、アップデートされ、地球の安定性とレジリエンスを維持するうえで最も重要な9つのシステム全てがはじめて評価され、9つのうち6つがすでに上限を超えていることが明らかにされました。
9つの項目「気候変動」「生物圏の一体性」「土地利用の変化」「淡水利用」「生物地球化学的循環」「海洋の酸性化」「大気エアロゾルによる負荷」「成層圏オゾン層の破壊」「新規化学物質」のうち、「気候変動」「生物圏の一体性」「土地利用の変化」「淡水利用」「生物地球化学的循環」は、現在すでに限界を超えている状態です。

最も限界を超えている「生物圏の一体性」=遺伝的多様性(Genetic diversity)と機能的多様性(Functional diversity)は、生物多様性の減少や生態系サービスの劣化を示しており、19 世紀後半に世界中で農畜産業や林業が拡大したところから、すでに境界が越えられていたことが示されました。森林を伐採してのうちに転用することで起こる「土地利用の変化」や化学肥料に含まれる窒素やリンが生態系の外に溢れ出すことで変化する「生物地球化学的循環」などを含めて、人の食糧生産のための農畜産業の影響が大きいことが指摘されています。

Food Planet Health by the EAT Lancet

フードシステムは、食糧生産を通じて、プラネタリーバウンダリーに影響を与えると同時に、人の心身の健康にも影響を与えることから、プラネタリーヘルスを実現するためにとても重要です。
豊かな土地の食文化とはかけ離れた工業製品のようなハイパープロセスフードの世界的な流通は、生産を通じて環境にも、人の腸内環境を通じて健康にも悪影響を与えています。
私たちは、食を通じて生態系、生命の網(WEB OF LIFE)の一部となり、農畜産を通じて生態系に影響を与えています。私たちは再び、食べるという日常の営みを見直し、過剰にグローバル化された食を見直し、土とつながり直すことが大切だと考えます。

拡張的生命観

プラネタリーヘルスを捉えるには、生命の再定義が必要です。
システム論的に捉えると、人は、外的環境から物質、エネルギー、情報を交換する開放系(オープンシステム)です。私たちの心身という内的環境と外的環境との関係性を再定義し、人の心身のシステムとつながり合う生態系、社会、情報空間などのシステムの全体性を捉え直し、全体のバランスやホメオスタシスを考えていきます。

PAGE TOP