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食べるという営みによって、人は風土となり、
生き物たちが織りなす生と死のダイナミズム、そのものとなる。
人類とこの惑星の未来を考えるために、日本列島に成立する「和食」を通して、
地球、生物、人の歴史、そして文化の積層を紐解いていく。
循環と積層が成立させる「人」そして、「私」とは・・・。
生命維持、欲求解消、栄養補給・・・だけでは無い、
食の深淵なる世界にディープダイブしながら、未来に持続可能な食文化を考えます。
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文化人類学的に食を深掘り続けてきた文脈デザイン研究所の玉利康延氏が、
ライフワークとして取り組む、食のクロニクル『和食人類学』の第1章「01 和食の道」をついにリリースしました。

(一社)プラネタリーヘルスイニシアティブPHIは、本格始動にあたり、農・食・歯・医、そして「食べる」を実践する生活者が一体となって、プラネタリーヘルスを支える包括的で実践的なアプローチ「アグリデントメディスン(農食歯医連携)」をプロジェクトの中心に据えていきます。
プラネタリーヘルスにおいて人を含む地球の未来に持続可能な食文化を考えるにあたり、食による人と社会、環境へのインパクトを考えるだけでなく、『和食人類学』的視座を持ち、深めることが不可欠だと考えています。
現代の食は、その土地の風土そのものを身体化してきた「食」という営みから変化し、土地と無関係の原料に由来した工業製品としてのハイパープロセスフード(超加工食品)を日常的に口にするようになりました。
私たちの身体の多くは、気づかずに摂取している甘味料や加工でんぷんなどの添加物を通して、北米・南米由来のトウモロコシでできています。
循環と積層を見失った「食」は、人の心身や社会、環境にネガティブな影響を与えています。
私たちそのもののアイデンティティ、生命観を再定義しながら、これから未来にどんな食を紡いでいくかを考えていきたいと思うのです。
本講座では、玉利氏の『和食人類学』的な洞察にプラネタリーヘルス的な視点を交えて広く深く紐解いていきます。
第0回:ガイダンス編アーカイブ動画
縄文時代から現代に紡がれる『和食積層曼荼羅』を読み解きます。
今、日本列島で私たちが食べている多くの食材が、大陸からの渡来であり、日本で生着し、独自に成熟したものです。米、小麦、味噌、などの日常の食材のルーツやルートを辿り、土地の特性や社会的背景の中で独自にアレンジされていく複雑な食文化の成立を踏まえて、今の私たちに帰結します。
第1回:米編アーカイブ動画
令和の米騒動などの社会情勢を踏まえて、緊急開催しました。
糖質制限による米食制限、コメに変わる小麦やコーン由来の糖質の摂取の増加、米の品種改良による性質の変化
など、私たちの米との関わりは、大きく変化しています。現在は、米農家が苦境に立たされ、日本の田園風景に耕作放棄地が増え、ソーラーパネルに置き換わりつつありますが、稲作、水田、米食が担ってきた環境、社会、文化、健康などの多面的な機能の喪失の影響は計り知れません。
文明を発展させ、文化の中心を担い、神とつながる手段でもあった「米」を今こそ見直し、未来の食文化に残したい「米」について考えていきます。
参加者の感想
40代製造業男性
「和食人類学は、現在、日本人と呼ばれる種族のたどってきた道のりを紐解くロゼッタストーンのような役割だと感じました。 そして、遺伝子レベルで様々な系譜が入り混じっていることや、大陸が長い時間をかけて移動して地層を築いていったように、複雑に絡み合いながら有機的にうごめく生態系として身体や精神をカタチづくってきたのであり、現在では、その姿は以前とは比べ物にならないスピードで変容を余儀なくされる状況におかれていることも合わせて認識しました。
また地球の肺と呼ばれるアマゾンの樹海が焼き払われ切り倒されていくように、人類が多様な生物の関係性と共に脈々と育んできた身体のネットワークは、ことごとく、命の灯火の消えたさら地のように失われようとしています。 単なる知識として和食人類学を読み解くのではなく、今を生きる私たちの命の源泉として分かちあい、未来へと受け継いでいく記憶として咀嚼していくものだと思います。
頭で理解すること以上に、実際の暮らしにおいて“食”を通して体現していくこと、また、文化を育む土壌菌のように育んでいくものだと感じました。
いずれにしても、日本語の成り立ちへの考察や、稲作の起源と派生においても、日本人という独立独歩した種族が始めからいて今へと至っているわけではなく、移動し交配していく中で特色を変化させながら、共生する生態系として土地に根づいてきたことが図解で俯瞰できるようになったことで、生命体として身体を拡張し、この星そのものとして生きることの豊かさを呼び覚ます時だと実感しました。
プラネタリーヘルスの実践、日々の暮らしの一つひとつ、そして様々な機会を通して体感し、楽しんでいければ幸いです。」
今後の開催予定
今後予定する講座は、「和食の道」のカテゴリーごと、また食材ごとに、さらにそれらを横断しながら、書籍にはまだ無い洞察を含めたお腹いっぱいな内容になる予定です。
食材を食しながら五感を使って知識を深める会を企画していきます。
乞うご期待!
【スピーカー】
玉利康延(文脈デザイン研究所):語り手

1979年東京生まれ。2000年代には新しい概念を社会に実装するプロジェクトに多数携わる。文化人類学者・竹村眞一氏らと環境・社会問題に取り組み、岡山県西粟倉村では地方創生の黎明期にブランディングを手がけた。2013年「東北食べる通信」創刊に参画し、グッドデザイン賞 [金賞] を受賞。文脈デザインの手法を確立し、文脈デザイン研究所を設立。現在は「和食人類学」をテーマに、執筆・講演・研究を行っている。今後は、日本各地に眠る風土や知恵を、次世代につなぐ物語として再編集する活動を構想中。効率化によって切断された文脈を繋ぎなおした事業やプロダクトが各地で生まれ広がり、我々がどう生きていくのかを問い直すきっかけをつくっている。鳥取県のプラネタリーヘルスのプロジェクトにおいて、フィールドワークを重ね、文脈デザイン、曼荼羅制作に関わる。
桐村里紗(一社プラネタリーヘルスイニシアティブ ):ガイド&聞き手

(一社)プラネタリーヘルス・イニシアティブ代表理事
1980年生まれ。医師として予防医療から終末期医療まで幅広く臨床経験を積んだのち、天籟株式会社を設立。
鳥取県江府町と連携協定を結び、「大山の流域」と東京「丸の内エリア」を拠点に都市とローカルの流域を結び、プラネタリーヘルスの経済、社会基盤をつくり、地方創生2.0を推進する。
著書に、『腸と森の「土」を育てる 微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)他多数。
『腸と森』には、玉利氏の案内による神奈川県大井町のフィールドも紹介。